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AIOps(アイオプス)とは何か? IT運用の進化をやさしく解説

Tags: AIOps, IT運用, 運用自動化, AI, 機械学習

AIOps(アイオプス)とは? IT運用を変えるAIの力

ITシステムは年々複雑になり、運用担当者の負担は増しています。サーバー、ネットワーク、アプリケーションなど、監視すべき要素は膨大になり、発生するアラートも多岐にわたります。このような状況で、システムを安定稼働させ続けるために注目されているのが「AIOps(アイオプス)」という考え方です。

AIOpsは「Artificial Intelligence for IT Operations」の略で、日本語では「IT運用における人工知能」と訳されます。ITシステムから収集される大量のデータ(ログ、メトリクス、イベントなど)をAI、特に機械学習を活用して分析し、IT運用のプロセスを自動化したり、効率化したりする取り組み全般を指します。

簡単に言うと、人間だけでは手に負えなくなりつつあるIT運用のタスクを、AIの力を借りて賢く、速くこなそう、という技術やアプローチのことです。

なぜAIOpsが必要とされているのか

AIOpsが必要とされる背景には、以下のような課題があります。

AIOpsは、これらの課題に対し、AIのデータ分析能力と自動化の力で立ち向かうことを目指しています。

AIOpsの基本的な仕組み

AIOpsは、一般的に以下の3つの主要なステップで構成されます。

  1. データの収集と集約: 様々なITシステム(サーバー、ネットワーク機器、アプリケーション、ミドルウェアなど)から、ログ、メトリクス(CPU使用率やメモリ使用量などの数値データ)、イベント(システムの状態変化)、構成情報などの運用に関わるあらゆるデータを収集し、一元的に集約します。データソースが多岐にわたるため、これらのデータを収集・統合する基盤が必要です。

  2. AI(機械学習)による分析: 集約された大量のデータを、機械学習などのAI技術を使って分析します。ここがAIOpsの核となる部分です。

    • 異常検知: 過去の正常な状態のデータを学習し、現在のデータとの違いから異常なパターン(例: 急激なCPU使用率の上昇、通常とは異なる通信パターン)を自動的に発見します。
    • パターン認識と相関分析: 多数のバラバラなアラートやイベントの中から、関連性のあるものを見つけ出し、一つのインシデントとしてまとめることで、問題の全体像を把握しやすくします。
    • 根本原因分析: 複雑に絡み合った事象の中から、障害やパフォーマンス低下の真の原因となっている箇所を特定します。

    (図1:AIOpsの仕組み概要 - データ収集・分析・アクションの流れ)

  3. アクションと自動化: AIによる分析結果に基づき、適切なアクションを実行または推奨します。

    • 通知と可視化: 分析結果(例: 異常検知、特定された根本原因)を運用担当者に通知し、分かりやすいダッシュボードなどで状況を可視化します。
    • 自動修復: 事前定義されたルールや、AIが推奨する対応策に基づき、システムを自動的に再起動したり、リソースを増強したりするなど、定型的な問題を自動的に修復します。
    • 予測: 過去のデータから将来のシステム状態(例: リソース枯渇の可能性、障害発生リスク)を予測し、プロアクティブな対策を可能にします。

AIOpsを導入するメリット

AIOpsを導入することで、IT運用には様々なメリットが期待できます。

まとめ

AIOpsは、複雑化する現代のITシステム運用において、AIと自動化の力を活用し、迅速かつ効率的な運用を実現するための重要なアプローチです。大量の運用データをAIで分析することで、異常の早期発見、根本原因の特定、そして将来予測や自動対応が可能になります。

これにより、障害対応の迅速化、運用コストの削減、そして何よりもシステム運用の安定化に大きく貢献します。ITシステムがビジネスの基盤としてますます重要になる中で、AIOpsは今後の運用を支えるカギとなる技術の一つと言えるでしょう。