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マイクロサービスとは何か? 仕組みとメリットをやさしく解説

Tags: マイクロサービス, アーキテクチャ, システム開発, モダン開発, API

ITシステム開発において、「マイクロサービス」という言葉を耳にすることが増えているのではないでしょうか。これは現代のシステム構築において非常に重要な考え方の一つです。ここでは、マイクロサービスとはどのようなものか、そしてなぜ多くの企業が注目しているのかについて、分かりやすく解説します。

マイクロサービスとは:小さく分割された機能の集合体

マイクロサービスとは、一つの大きなアプリケーションを、独立して開発・デプロイ・運用できる小さなサービスの集まりとして構築するアーキテクチャ(設計思想)のことです。

例えるなら、家電の「多機能一体型システム」と「個別の専門機能を持つ家電セット」のようなものです。

つまり、マイクロサービスでは、アプリケーションが持つ様々な機能(例えば、ECサイトであれば「ユーザー管理」「商品管理」「注文処理」「決済処理」など)を、それぞれ独立した小さなサービスとして開発・運用します。これらの小さなサービスは、通常、API(Application Programming Interface)というインターフェースを通じて互いに連携し合って動作します。

なぜマイクロサービスが注目されるのか? モノリシックとの比較

従来のシステム開発では、「モノリシックアーキテクチャ」と呼ばれる、一つの大きなコードベース(プログラムのまとまり)で全ての機能を実現する方式が主流でした。開発の初期段階ではシンプルで分かりやすいというメリットがありますが、システムが大規模になり、機能が増えるにつれて以下のような課題が出てきやすいです。

一方、マイクロサービスアーキテクチャは、これらのモノリシックアーキテクチャの課題を解決する手段として注目されています。

マイクロサービスの主なメリット

マイクロサービスを採用することには、以下のようなメリットがあります。

  1. 開発スピードの向上: 各サービスが独立しているため、異なるチームが並行して開発を進めやすくなります。また、特定のサービスだけを修正・改善する際に、他のサービスへの影響を最小限に抑えながら迅速に対応できます。

  2. 技術の柔軟性: 各サービスは独立して開発されるため、サービスごとに最適なプログラミング言語、データベース、フレームワークなどを選択できます。これにより、新しい技術を導入したり、既存技術をアップデートしたりすることが容易になります。

  3. システムの信頼性向上: たとえあるサービスに障害が発生しても、他のサービスへの影響を局所化できます(完全に影響をなくすわけではありませんが、モノリシックに比べて影響範囲を小さくしやすい)。これにより、システム全体が完全に停止するリスクを減らし、サービスの可用性を高めることができます。

  4. スケーラビリティ(拡張性)の向上: 特定のサービスにアクセスが集中した場合、そのサービスだけを増強(スケール)させることができます。これにより、リソースを効率的に利用し、コストを最適化しながらシステム全体の負荷に対応できます。

  5. チーム間の自律性: 各チームが特定のサービスを担当し、そのサービスについては開発から運用まで責任を持つようになります。これにより、チームの自律性が高まり、より迅速で柔軟な開発・運用体制を構築できます。

マイクロサービスの実現を支える技術

マイクロサービスは、その思想を実現するために様々な技術と組み合わせて利用されることが多いです。

これらの技術は、マイクロサービスの独立性やスケーラビリティといった特性を強化するために重要な役割を果たします。

まとめ

マイクロサービスは、アプリケーションを独立した小さなサービスの集まりとして構築するアーキテクチャです。従来のモノリシックアーキテクチャと比較して、開発スピードの向上、技術の柔軟性、システムの信頼性向上、スケーラビリティの向上といった多くのメリットを持ちます。

API、コンテナ、サーバーレスといった技術と組み合わせて利用されることが一般的で、現代の複雑で変化の速いビジネス要求に応えるための重要な考え方となっています。社内エンジニアとのコミュニケーションにおいて、「マイクロサービス」という言葉が出た際には、システムが機能ごとに小さく分割されているイメージを持つと、議論の理解に役立つはずです。