データレイクとは何か? 仕組みとメリットをやさしく解説
データレイクとは何か? 現代のデータ活用基盤を理解する
近年、ビジネスにおけるデータ活用の重要性はますます高まっています。Webサイトのアクセスログ、顧客の購買履歴、SNSでの評判、IoT機器からのセンサーデータなど、企業が集めるデータの種類や量は爆発的に増加しています。これらの多様で膨大なデータを効果的に活用するための基盤として、「データレイク」という考え方が注目されています。
データレイクとは、様々な形式のデータを、加工せずに「生(Raw)」の状態で一箇所に集約して保存するシステムまたはリポジトリのことです。文字通り「データの湖」のように、あらゆる種類のデータがそのままの形で蓄えられます。
従来のデータ保存方法と比較すると、この「加工しない」という点がデータレイクの大きな特徴です。データを使用する目的や分析方法があらかじめ明確でなくても、まずはデータを保管しておくことができます。そして、必要になったときに、目的に応じてデータを加工し、分析に利用します。
例えるなら、データウェアハウスが「整理整頓された図書館」だとすると、データレイクは「あらゆるものが仕分けされずに投げ込まれた巨大な倉庫」のようなものです。図書館は探しやすく整理されていますが、最初に厳密なルールに従って整理する必要があります。一方、倉庫はそのまま放り込めますが、使うときに自分で探して整理する必要があります。
データレイクの基本的な仕組み
データレイクは、主に以下の要素で構成されます。
- ストレージ: 大量のデータを低コストで保管できる分散ストレージシステムやオブジェクトストレージなどが利用されます。非構造化データ(テキスト、画像、音声など)、半構造化データ(JSON、XMLなど)、構造化データ(データベース形式)など、様々な形式のデータがそのまま取り込まれます。
- 処理基盤: データレイクに蓄えられたデータを分析・加工するための計算リソースです。バッチ処理やストリーム処理など、多様なデータ処理ニーズに対応できる技術(例: Apache Spark, Hadoop関連技術など)が用いられます。
- カタログ/メタデータ管理: データがどこに、どのような形式で保存されているか、どのような内容かといった情報を管理します。これにより、大量のデータの中から必要なデータを見つけ出し、利用しやすくします。
データは様々なソース(業務システム、Webサイト、IoTデバイスなど)から取り込まれ、ストレージに保存されます。保存されたデータは、分析者がツールや処理基盤を使って、必要な形に加工・整形してから分析に利用します。この考え方を「Schema on Read」(読み出すときにスキーマ(構造)を決める)と呼びます。
データレイクを導入するメリット
データレイクは、現代のデータ活用においていくつかの重要なメリットをもたらします。
- 柔軟性と俊敏性: あらかじめデータの構造や利用方法を厳密に決める必要がないため、変化するビジネスニーズや新しい分析手法に迅速に対応できます。データ分析の試行錯誤がしやすくなります。
- 多様なデータの集約: 構造化データだけでなく、テキスト、画像、音声、動画など、これまで分析が難しかった非構造化データや半構造化データも一元的に管理できます。
- 低コストでの保管: 大容量のデータを比較的安価なストレージに保管できるため、全てのデータを捨てずに取っておくことが経済的に可能になります。
- 高度な分析への活用: 機械学習や人工知能といった、多様なデータを大量に必要とする高度な分析手法の基盤として非常に適しています。
- 新しい知見の発見: 目的を定めずに様々なデータを収集しておくことで、後から予期せぬ関連性や新しいビジネスチャンスにつながる知見を発見できる可能性があります。
データウェアハウスとの違いを理解する
データレイクと混同されやすいものに「データウェアハウス」があります。IT業界1年目のマーケターとして、この二つの違いを理解しておくことは、エンジニアとデータ活用について話す際に非常に役立ちます。
| 特徴 | データウェアハウス | データレイク | | :----------- | :----------------------------------- | :------------------------------------- | | 保管するデータ | 構造化データ(明確な形式を持つデータ) | 構造化、半構造化、非構造化データなど様々 | | データの状態 | 分析しやすいように加工・整形済み | 生(Raw)の状態 | | データの定義 | 利用前に厳密な定義が必要(Schema on Write) | 利用時に柔軟に定義(Schema on Read) | | 主な利用者 | 経営層、ビジネスアナリストなど(定型分析) | データサイエンティスト、データエンジニアなど(探索的分析、機械学習) | | 目的 | レポート作成、意思決定のための分析 | 多様な分析、機械学習、将来の利用に備える |
データウェアハウスは、あらかじめ決められた目的に沿ってデータをETL(Extract, Transform, Load:抽出、変換、書き込み)というプロセスで整形してから格納します(Schema on Write)。そのため、定型的な分析やレポート作成に向いています。
一方、データレイクはデータをそのまま格納し、利用する人がその都度必要な形に加工します(Schema on Read)。これにより、様々な角度からの分析や、新しい手法を用いた高度な分析に適しています。
どちらが良い、悪いではなく、それぞれの特徴を理解し、目的に応じて使い分けたり、あるいは組み合わせて利用したりすることが一般的です。例えば、データレイクで多様なデータを収集・探索し、そこから得られた知見を元に、データウェアハウスに格納するデータを決定するといった連携も可能です。
まとめ
データレイクは、様々な形式のデータを加工せずに一箇所に集め、必要に応じて柔軟に活用するための現代的なデータ基盤です。その柔軟性、多様なデータ対応、コスト効率の良さから、ビッグデータ分析や機械学習といった高度なデータ活用の基盤として広く利用されています。
データウェアハウスとは目的や仕組みが異なりますが、それぞれがお互いを補完し合う関係にあります。データレイクの概念を理解しておくことは、増え続ける多様なデータをいかにビジネスに活かしていくかを考える上で、きっと役立つでしょう。